英文学・ヨーロッパ思想史(平野ゼミ)
教員氏名 | 平野 幸治(ひらの こうじ) |
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職名 | 教授 |
専門分野 | 英文学・ヨ-ロッパ思想史、特にアイルランド文学、20世紀初頭のモダニスト文学、20世紀末から21世紀初頭の英文学 |
ゼミのテーマ
19世紀末から21世紀初頭の英文学において、「拡大する世界と縮小する国家」のあり方の中で個人の内面の変化や個人と社会との関係はどのように形成されてきたか。特にKazuo IshiguroやE. M. Forsterの作品を中心に「私を作る」という観点から小説を研究する。
このゼミでは、どのようなことを、どのように学べるか
このゼミでは、文学作品を英語で読み、いくつかのテーマをグループで討議するので、個人の考えや他者への理解が広がる。プレゼミでは、Kazuo Ishiguroの3作品The Remains of the Day, Never Let Me Go, The Buried Giantを扱い要約や解釈の日本語作文を課す。同時にShakespeareの劇を素材に研究の方法を紹介する。実際に観劇も行う。ゼミⅠでは、A Very Short IntroductionのEnglish Literatureをテキストに、「物語はどこから始まるのか?」、「物語の終わりは?」、「読者はどこまで作者に近づけるか」等の視点から小説を考察する。ゼミⅡでは、個人と社会との「関係性」にポイントを置き、E. M. Forsterの小説Howards EndやA Room with a Viewを読み個人の内面の形成と社会の受容についてForsterの評論を援用しながら考える。ゼミ Ⅰ・ゼミⅡともに討論し、文章化し、研究成果の発表を目標にする。授業時間外での学生の読書を促し、学生は自律的に文学研究ができるようになる。
このゼミで学んだことは将来どのように役立てることができるか
“I-S-E-E”を身につけ、将来自律して考えられるようになる。“I-S-E-E”とは、① Illustrate (立証する能力):自ら、課題を発見したり、仮説を立てたりすること ② State (人に述べる能力): 強制されなくても自ら進んで何かを述べる気構え③ Elaborate (改善する能力): 意見や考えを改善したりさらに洗練したりする思考力 ④ Exemplify (例示する能力): 人に説明するために意見や考えを具体化する力、このような4つの力が身に付き、自律して考えられるようになる。“I-S-E-E”とは汎用性のある能力。さらに、ゼミ活動で得た「読書の習慣化」、「文章を書くことの日常化」、「一所懸命にやることの意義」と「対話の愉しみ」は、今後の人生を豊かにしてくれる。ゼミで身につけた“I-S-E-E”は、近接的な将来には進路に関わる文章作成や面接の際の対応能力に、中・長期的な「将来」には、自律的に考え、徒に対話を不安がらず、文学を読み続ける姿勢に有効と思われる。
学生へのメッセージ
昨今の日本の高等教育において「人文学」は冬の時代である。人文学を英語ではhumanitiesと呼び、人文学とは包括的な文言(umbrella word)である。人文学という「傘」の中に哲学、文学、宗教、芸術、歴史や言語等の大学ではお馴染みの学問が肩寄せ合っている。言わば、人類の所産であり記録である。このゼミでは文学研究を中心に行う。「文学研究はどのようにあるべきなのか」という問いは、19世紀末から20世紀初頭の英国の大学の問いでもあった。ゼミでは、「文学とは?」と大きな問いから「この文章の意味は?」という問いまで、「問いを持つ」ことの意義や「問いを生きる」ことの意味を考える。観劇・ゼミ合宿の授業以外の活動は「思い出」つまり記憶を育む。興味を持った学生は、DVD『めぐりあう時間たち』と『アマデウス』をどうか見てもらいたい。教員の研究室の扉に掲示する文書にも注意して頂きたい。研究室の扉は、比喩的に言えば、「文学の扉」であり「未来への扉」でもある。